路傍にあるお地蔵さま以外の石像(1)道祖神

豊中には路傍にたくさんのお地蔵さまが祀られていますが、その中にはお地蔵さま以外の石像もあります。よく見かけるのが「道祖神(どうそじん)」です。 道祖神とは、塞の神(さいのかみ)とも呼ばれ、疫病や災厄をさえぎる境神(さかいがみ)、あるいは旅行の安全を守る神として村境や峠に祀られたり、家内安全、夫婦和合のしるしとして村内に祀られたりする石像で、信州や関東地方で多く見られます。多くは一つの石に一対(男女二体)の像が刻まれています。 【写真は京都市下京区にある道祖神社の道祖神】 [![ブログ用画像size320](/dbs/images/lb00213/A_00213180_130001.jpg)](/dbs/images/lb00213/A_00213180_130001.jpg) 【豊中に見られる道祖神:春日神社】 豊中に見られる道祖神の一つは、宮山町の春日神社に祀られています。地蔵尊と表示された祠の中に、一体のお地蔵さま(右)と一体の道祖神(左)が合祀されています。 [![豊中のお地蔵さま 宮山町size320](/dbs/images/oz00210/T_00210180_030001.jpg)](/dbs/images/oz00210/T_00210180_030001.jpg) 地蔵尊の説明板 [![ブログ用画像size320](/dbs/images/lb00213/A_00213180_120001.jpg)](/dbs/images/lb00213/A_00213180_120001.jpg) 仏教の菩薩さまであるお地蔵さまがどうして神社で祀られているのか、またどうして道祖神と合祀されているのか、その歴史や経緯について興味が湧くところですが、春日神社の宮司さんに伺ったところ「過去の伝承については詳しく伝わっていないので分からない」とのことでした。 【お地蔵さまと道祖神の形の違い】 お地蔵さまは石板の外形の、光背と呼ばれる上の部分が曲線で丸みを帯びており、中には先端が尖っている物もあります。この形が舟の舳先(へさき)に似ていることから「舟形の光背」といわれます。一方道祖神は、上部が直線的で三角形や台形の形をしており、2体が陽刻された像の上部が庇(ひさし)のように出っ張っているのが特徴です。春日神社の並んだ石像から、その特徴の違いを見ることができます。 春日神社のアーカイブページはこちら https://hokusetsu-archives.jp/dbs/page?id=T_00210180 【春日神社以外にもある道祖神の形の石像】 「道祖神」と明確に表示された石像は、豊中市内では宮山町の春日神社のほかには見当たりませんが、お地蔵さまが祀られているところに道祖神の形の特徴を持った石像が混じっていることはよくあります。 【事例1】刀根山3-7の石像群(識別番号:C11) ここには祠が3つ、石像が10体祀られていますが、その中に双体の道祖神の形をしたものがあります [![ブログ用画像size320](/dbs/images/lb00213/A_00213180_110001.jpg)](/dbs/images/lb00213/A_00213180_110001.jpg) 刀根山3-7の石像群(識別番号:C11)のアーカイブページはこちら https://hokusetsu-archives.jp/dbs/page?id=T_00211880 【事例2】刀根山元町10の石像群「首なし地蔵」(識別番号:C09) ここには合計 71体の石像がありますが、その中に双体の道祖神の形をしたものが複数見られます(写真の3個の双体石像のうち2個は上部が三角形ではありません) [![ブログ用画像size320](/dbs/images/lb00213/A_00213180_100001.jpg)](/dbs/images/lb00213/A_00213180_100001.jpg) [![ブログ用画像size320](/dbs/images/lb00213/A_00213180_090001.jpg)](/dbs/images/lb00213/A_00213180_090001.jpg) [![ブログ用画像size320](/dbs/images/lb00213/A_00213180_080001.jpg)](/dbs/images/lb00213/A_00213180_080001.jpg) 刀根山元町10の石像群「首なし地蔵」(識別番号:C09)のアーカイブページはこちら https://hokusetsu-archives.jp/dbs/page?id=T_00211860 【事例3】刀根山元町6の石像群(南刀根山会館内)(識別番号:C35) 合計 20体ある石像の中に、双体の道祖神の形をしたものがあります [![ブログ用画像size320](/dbs/images/lb00213/A_00213180_070001.jpg)](/dbs/images/lb00213/A_00213180_070001.jpg) 刀根山元町6の石像群(南刀根山会館内)(識別番号:C35)のアーカイブページはこちら https://hokusetsu-archives.jp/dbs/page?id=T_00212060 道祖神信仰は東日本に多く見られ、道祖神像を祀り村としての神事を行う民俗風習が残っている(あるいは近年まで残っていた)ところが多く、関西ではあまり見かけないと言われます。 文化庁が調査した「日本民俗地図Ⅲ 信仰・社会生活」(国土地理協会1969年発行)に、道祖神の民俗行事の実態調査と全国分布図があります。 (下図は上記資料より引用。画像をクリックすると拡大表示されます) [![お地蔵さま資料 二次利用不可画像size320](/dbs/images/lb00213/A_00213310_000001.jpg)](/dbs/images/lb00213/A_00213310_000001.jpg) これを見ると、道祖神が祀られ、あるいは信仰する風習が残っている地点は、長野県及び関東に濃く分布し、中国地方や九州北部にも見られるのに対し、関西ではあまり記録されていないのが見て取れます。 (当該調査は、文化庁文化財保護委員会が1962(昭和37)年度から3カ年にわたり全国(46都道府県)に対して実施した「民俗資料緊急調査」の調査票の中から、道祖神について整理したもの。調査では、各県それぞれ30箇所程度(主に農村)を対象として抽出し、20項目の民俗資料の実態(衣食住、生産、信仰、年中行事等に関する風俗習慣)について調査が行われた。調査対象が民俗風習の残っていると思われる村落を中心に行われたため、都市部は調査対象となっていない。) 【道祖神とお地蔵さまの結びつき】 道祖神の本地仏は地蔵菩薩だとされ、地蔵信仰と結びついたとの説があります。お地蔵さまと道祖神が一緒に祀られているのは、このような信仰形態から来るものなのでしょうか。 豊中には、目立たない中に少なくない数の「道祖神の形をした石像」がお地蔵さまに混在して祀られています。多くは赤いエプロンを着せられて、お地蔵さまと一緒に祀られていますので、お参りしている人も道祖神として認識されていないのかも知れません。 このことは、京都市内の寺社や街中でお地蔵さまが祀られている場所にも同じように「道祖神の形をした石像」が混じって祀られているのを見かけますので、似たような状況にあるのかも知れません。 (写真は京都市下京区の路地の石像群。お地蔵さまに混じって「道祖神の形をした石像」が祀られている) [![ブログ用画像size320](/dbs/images/lb00213/A_00213180_050001.jpg)](/dbs/images/lb00213/A_00213180_050001.jpg) ここに書きました「道祖神」についてのブログは、違う知見があるかも知れません。ご存知のことやご指摘があれば北摂アーカイブスまで情報提供をお願いします。 北摂アーカイブスの「お地蔵さま」に関するブログの一覧は、こちらをご覧ください https://hokusetsu-archives.jp/cms/ozizousama/blog

掲載日: 2022-02-08 (C137)