路傍にあるお地蔵さま以外の石像(2)庚申

豊中には路傍にたくさんの石像が祀られていますが、その中にはお地蔵さま以外の石像もあります。「道祖神」に次いで、「庚申(こうしん)」について考察します。 庚申とは、中国から伝わった道教の教えに発するもので、60日ごとの庚申の日の夜に町内の人々が寄り集まって夜明かしする民俗習慣がありました。 (庚申については後の説明をご参照ください) その時の祈祷の対象となったのが青面金剛(しょうめんこんごう)という像で、三つの眼と4本の腕を持ち、足元に二匹の邪気を踏まえている形をした明王です。 豊中では、浜1-13の河川の堤防に下の写真の青面金剛像が祀られています。 [![豊中のお地蔵さま 番外 浜size320](/dbs/images/oz00213/T_00213300_000001.jpg)](/dbs/images/oz00213/T_00213300_000001.jpg) この青面金剛像のアーカイブページはこちらです https://hokusetsu-archives.jp/dbs/page?id=T_00213300 そのほか、桜の町4-8の地蔵院境内には、「青面金剛明王、享保七壬寅」(享保7年は1722年)との銘文のある石塔が建てられていて、300年前の物と思われます。 豊中にも庚申の風習を実践していた人々がいたことがうかがえます。 【庚申について】 庚申とは、十干十二支の庚申(かのえ さる)のことで、60日ごとの庚申の夜には人の体内にひそんでいる三尸(さんし)の虫が寝ている間に体を抜け出して天に昇り、天帝に罪過を告げ口するので、この夜は眠らずに身を慎まねばならないという説に基づく。平安時代には貴族の間に流行し、庚申の夜に会合をして詩歌管弦の遊びをしたと言われており、その風習が民間にも伝播していった。江戸時代からは青面金剛像や碑が多く作られた。 庚申の風習は東日本に多く、関西南部、四国、九州にも見られるようです。 文化庁が調査した「日本民俗地図Ⅲ 信仰・社会生活」(国土地理協会1969年発行)に、庚申の民俗行事の実態調査と全国分布図があります。 (下図は上記資料より引用。画像をクリックすると拡大表示されます) [![お地蔵さま資料 二次利用不可画像size320](/dbs/images/lb00213/A_00213310_010001.jpg)](/dbs/images/lb00213/A_00213310_010001.jpg) これを見ると、調査時点で庚申塔が確認された地点は愛知、岐阜、長野県以東に濃く分布し、関西南部、四国東部、九州にも分布しているが、大阪府北部ではあまり認められないことがわかります。 (当該調査は、文化庁文化財保護委員会が1962(昭和37)年度から3カ年にわたり全国(46都道府県)に対して実施した「民俗資料緊急調査」の調査票の中から、庚申塔について整理したもの。調査では、各県それぞれ30箇所程度(主に農村)を対象として抽出し、20項目の民俗資料の実態(衣食住、生産、信仰、年中行事等に関する風俗習慣)について調査が行われた。調査対象が民俗風習の残っていると思われる村落を中心に行われたため、都市部は調査対象となっていない。) 【庚申とお地蔵さまの結びつき】 庚申(道教を起源に持つ)とお地蔵さま(仏教の菩薩さま)の結びつきについては、確実な情報がありません。 道祖神とお地蔵さまが本地垂迹の考え方から連携しているという説(1)、道祖神と庚申が習合したものが見られるという説(2)、などが見られますが、庚申とお地蔵さまが結びついているという学説は見当たりません。けれども、豊中市浜の青面金剛像の脇に小さいお地蔵さまの人形が供えられているのを見ると、もしかしたらこの青面金剛像をお地蔵さまとしてお参りしている方がおられるのかも知れません。 青面金剛像が庚申の祈祷対象であり、庚申の夜に人々が寄り集まって夜明かししたとすると、豊中市浜の像は場所的にその前で庚申の夜の行事が行われたとは考えにくく、当時はどちらかの家か集会所のような場所に祀られていたものが、習慣が廃れた後に現在の場所に移されたという可能性も考えられます。現在も生花が供えられている事を見ると、お参りしお世話されている方がおられるようです。 出典 (1)Wikipedia 本地垂迹 (2)日本民俗地図Ⅲ 信仰・社会生活(国土地理協会発行) ここに書きました「庚申」についてのブログは、違う知見があるかも知れません。また、北摂アーカイブスで把握していない庚申塔について、ご存知のことやご指摘があれば北摂アーカイブスまで情報提供をお願いします。 北摂アーカイブスの「お地蔵さま」に関するブログの一覧は、こちらをご覧ください https://hokusetsu-archives.jp/cms/ozizousama/blog

掲載日: 2022-02-14 (C137)