お地蔵さまの話題(1)「法廷に立たれたお地蔵さま」

大阪市旭区の自治会が一心地蔵と満願地蔵の二体のお地蔵さまを建立した際に、大阪市から市有地を借りたことについて、訴訟が起こされた事例があります。 訴訟を起こしたのは福島区のキリスト教教会の牧師さんで、「地蔵は礼拝対象としての設備を備えており、明らかに仏教信仰に基づいて建立された宗教施設である。それに市有地を提供するのは憲法の政教分離の規定に反する。」と主張されました。 それに対して市側は「地蔵は習俗であり、コミュニティ意識をつくるために役立つ」と主張し、対立しました。 裁判は高等裁判所まで持ち込まれましたが、控訴審判決(1991(平成3)年)で裁判長は「地蔵信仰は宗教性が薄れ伝統的な習俗となっており、市の行為は憲法が禁じた宗教活動に当たらない」として合憲判決を示した大阪地裁の一審判決を支持し、違憲確認を求めた原告の控訴を棄却しました。判決ではさらに「地蔵像は年1回2日間、すでに季節の風物として習俗化した地蔵盆の行事が行われているだけである」とし、大阪市の行為が宗教的な効果を上げているとする原告側の主張を否定しました。 大阪市内だけでなく、豊中市内でもお地蔵さまが道路や公園など公有地と思われる場所に祀られている事例は少なからず見受けられます。上記の判例によれば、これらのお地蔵さまも違憲と訴えられるリスクはあまりなさそうです。 お地蔵さまはもともと仏教の菩薩さまで、お地蔵さま信仰は宗教的な世界から生まれたものですが、長い日本の民俗史のなかで人々の生活の中に溶け込んだ習俗として根づいていると認識されているということのようです。 (「大阪のお地蔵さま」田野登著 渓水社発行 を参考にさせていただきました) 【お地蔵さまブログの全体リストはこちら】 https://hokusetsu-archives.jp/cms/ozizousama/blog

掲載日: 2022-05-18 (C137)